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左下腹部痛の原因と検査、治療法を徹底解説!放置は危険?【医師監修で詳しく解説】

  • 院長
  • 2024年5月17日
  • 読了時間: 20分

左下腹部痛は消化器内科の中でも非常に多い訴えです。


主にその診断は、過敏性腸炎、虚血性腸炎、憩室炎、大腸がんです。

では、以下左下腹部痛について書いていきます。



「左下腹部がズキズキ痛む…」「チクチクとした痛みが続く…」

左下腹部の痛みに悩まされていませんか?その痛み、もしかしたら何かの病気のサインかもしれません。左下腹部にはS状結腸や下行結腸といった大腸の一部、そして男性の場合は前立腺の一部、女性の場合は卵巣や卵管といった大切な臓器があります。また、尿管や膀胱などの泌尿器系の臓器も関連していることがあります。

この記事では、左下腹部痛で考えられる主な原因から、医療機関で行われる検査、そして具体的な治療法まで、網羅的に解説します。ご自身の症状と照らし合わせながら、適切な対処法を見つける一助となれば幸いです。

【この記事でわかること】

  • 左下腹部痛の様々な原因(消化器系、泌尿器系、婦人科系、男性特有、その他)

  • 痛みに伴う可能性のある症状

  • 医療機関を受診すべき危険なサイン

  • 左下腹部痛の検査方法(問診から画像検査、内視鏡検査まで)

  • 原因別の治療法(薬物療法、食事療法、手術など)

  • 自宅でできる応急処置と注意点

  • 左下腹部痛の予防法


放置は禁物!左下腹部痛に潜むリスク


一時的な痛みであれば様子を見ることもありますが、痛みが続く場合や、激しい痛み、発熱や吐き気、血便などを伴う場合は、速やかに医療機関を受診する必要があります。自己判断で放置してしまうと、病状が悪化し、治療が困難になったり、場合によっては命に関わる事態に至る可能性も否定できません。


1.左下腹部痛の考えられる原因とは?

左下腹部痛の原因は多岐にわたります。ここでは、主に考えられる原因を臓器別に分類して解説します。


1-1.消化器系の病気

左下腹部には大腸の一部であるS状結腸や下行結腸があるため、これらの臓器のトラブルが痛みの原因となることが多くあります。

  • 便秘症:

    • 症状: 左下腹部痛のほか、お腹の張り、残便感、排便困難など。S状結腸は便が溜まりやすい部位のため、便秘によって痛みが出やすいです。

    • 原因: 食物繊維の不足、水分不足、運動不足、ストレス、薬剤の副作用など。

  • 過敏性腸症候群 (IBS):

    • 症状: 腹痛(特に左下腹部に出やすい)、腹部不快感、下痢や便秘を繰り返す、お腹が鳴る、ガスが溜まるなど。ストレスが関与することが多いとされています。

    • 原因: 明確な原因は不明ですが、ストレス、生活習慣の乱れ、腸内細菌叢のバランスの乱れなどが関与していると考えられています。

  • 大腸憩室炎(だいちょうけいしつえん):

    • 症状: 左下腹部の持続的な痛み、圧痛(押すと痛む)、発熱、吐き気、嘔吐、便秘や下痢など。憩室とは腸管の壁が外側に袋状に飛び出したもので、そこに炎症が起こる病気です。特にS状結腸にできやすい傾向があります。

    • 原因: 憩室ができる原因は、食物繊維の少ない食事や便秘、加齢などが考えられています。炎症は、憩室内に便などが詰まることで細菌感染が起こることが主な原因です。

  • 虚血性大腸炎(きょけつせいだいちょうえん):

    • 症状: 突然の激しい腹痛(特に左下腹部)、下痢、血便(鮮血~暗赤色)。高齢者や動脈硬化のある方、便秘の方に起こりやすいとされています。

    • 原因: 大腸の血管が一時的に詰まったり、血流が悪くなることで、大腸の粘膜に炎症や壊死が起こる病気です。

  • 潰瘍性大腸炎(かいようせいだいちょうえん):

    • 症状: 左下腹部痛、下痢、粘血便(血液や粘液の混じった便)、発熱、体重減少など。大腸の粘膜に慢性の炎症や潰瘍ができる原因不明の病気で、国の指定難病の一つです。

    • 原因: 免疫異常の関与が考えられていますが、明確な原因はわかっていません。

  • クローン病:

    • 症状: 腹痛(右下腹部が多いが左下腹部にも起こりうる)、下痢、血便、体重減少、発熱、肛門病変(痔ろうなど)。口腔から肛門までの消化管全体に炎症や潰瘍が起こりうる原因不明の病気で、これも国の指定難病です。

    • 原因: 免疫異常の関与が考えられていますが、明確な原因はわかっていません。

  • 大腸がん:

    • 症状: 初期には自覚症状がないことが多いですが、進行すると左下腹部痛、便秘や下痢、血便、便が細くなる、腹部膨満感、体重減少などが現れることがあります。S状結腸がんは比較的左下腹部痛を伴いやすいとされます。

    • 原因: 食生活の欧米化、遺伝的要因、加齢などがリスク因子とされています。

  • S状結腸軸捻転症(エスじょうけっちょうじくねんてんしょう):

    • 症状: 突然の激しい腹痛、腹部膨満、嘔吐、排便・排ガスの停止。S状結腸がねじれてしまい、腸閉塞を起こす病気です。高齢者や寝たきりの方に比較的多く見られます。

    • 原因: 長いS状結腸、便秘、腹部手術の既往などが誘因となることがあります。

  • 急性腸炎(感染性腸炎など):

    • 症状: 左下腹部痛、下痢、嘔吐、発熱、血便など。細菌やウイルス感染が原因となることが多いです。

    • 原因: サルモネラ菌、カンピロバクター、ノロウイルス、ロタウイルスなどの病原体への感染。




1-2.泌尿器系の病気

尿路(腎臓、尿管、膀胱、尿道)の異常によっても左下腹部痛が起こることがあります。

  • 尿路結石(特に左尿管結石):

    • 症状: 突然の激しい脇腹~下腹部痛(疝痛発作)、血尿、吐き気、嘔吐、頻尿、残尿感など。石が左の尿管にある場合に左下腹部に痛みが出ます。

    • 原因: シュウ酸やカルシウムなどの成分が腎臓で結晶化し、石となったもの。食生活の偏り、水分不足、遺伝などが関与します。

  • 腎盂腎炎(じんうじんえん):

    • 症状: 高熱(38℃以上)、悪寒、戦慄、脇腹~背中の痛み(腎臓があるあたり)、吐き気、嘔吐、頻尿、排尿時痛、血尿など。膀胱炎から細菌が腎臓まで逆行して感染することで起こることが多いです。左の腎臓に起これば左側の痛みとして感じられます。

    • 原因: 大腸菌などの細菌感染。

  • 膀胱炎:

    • 症状: 頻尿、排尿時痛、残尿感、尿混濁、血尿、下腹部痛(恥骨上部あたりに多いが、関連痛として左下腹部に感じることも)。

    • 原因: 大腸菌などの細菌感染が主で、特に女性に多い病気です。


1-3.婦人科系の病気(女性の場合)

女性の場合、子宮や卵巣といった女性特有の臓器の病気が左下腹部痛の原因となることがあります。

  • 卵巣嚢腫(らんそうのうしゅ)・卵巣茎捻転(らんそうけいねんてん):

    • 症状:

      • 卵巣嚢腫: 小さい場合は無症状のことが多いですが、大きくなると下腹部痛、腹部膨満感、便秘、頻尿などを起こすことがあります。

      • 卵巣茎捻転: 卵巣嚢腫が根元からねじれてしまう状態で、突然の激しい下腹部痛、吐き気、嘔吐などが起こります。緊急手術が必要となることが多いです。左の卵巣に起これば左下腹部痛となります。

    • 原因: 卵巣嚢腫の種類により異なります。茎捻転は嚢腫が大きくなることや急な体の動きなどが誘因となります。

  • 子宮内膜症:

    • 症状: 月経痛(生理痛)の悪化、月経時以外の下腹部痛、腰痛、性交痛、排便痛、不妊など。子宮内膜に似た組織が子宮以外の場所(卵巣、腹膜など)で増殖する病気です。左側の卵巣や腹膜に病変があれば左下腹部痛の原因となります。

    • 原因: 明確な原因は不明ですが、月経血の逆流などが考えられています。

  • 子宮筋腫:

    • 症状: 無症状のことも多いですが、筋腫の大きさや位置によって過多月経、月経困難症、不正出血、下腹部痛、腰痛、頻尿、便秘などを起こすことがあります。筋腫が左側に圧迫症状を起こす場合に左下腹部痛を感じることがあります。

    • 原因: 女性ホルモン(エストロゲン)の影響で大きくなると考えられています。

  • 骨盤内炎症性疾患 (PID):

    • 症状: 下腹部痛(左右どちらか、または両側)、おりものの異常(量が増える、色が黄色や緑色になる、臭いが強くなるなど)、不正出血、発熱、吐き気など。子宮、卵管、卵巣、骨盤腹膜などに細菌が感染して炎症を起こす病気の総称です。

    • 原因: クラミジアや淋菌などの性感染症が主な原因です。

  • 異所性妊娠(子宮外妊娠):

    • 症状: 無月経(生理が来ない)、少量の不正出血、下腹部痛(片側が多い)。受精卵が子宮内膜以外の場所(卵管など)に着床してしまう状態で、進行すると卵管破裂などを起こし、激痛やショック状態になる危険性があります。妊娠の可能性がある場合は特に注意が必要です。

    • 原因: 卵管の炎症や癒着、クラミジア感染の既往などがリスク因子となります。


1-4.男性特有の病気(男性の場合)

  • 精巣上体炎(せいそうじょうたいえん):

    • 症状: 陰嚢の腫れ、痛み、熱感、発熱、下腹部痛(炎症が放散して感じることがある)。精巣(睾丸)の隣にある精巣上体に細菌が感染して炎症を起こす病気です。

    • 原因: 尿道からの細菌感染(大腸菌、クラミジア、淋菌など)が主です。

  • 前立腺炎:

    • 症状: 排尿時痛、頻尿、残尿感、会陰部(股の間)の不快感・痛み、下腹部痛、発熱(急性の場合)など。前立腺に炎症が起こる病気です。

    • 原因: 細菌感染によるものと、細菌感染以外の原因によるものがあります。長時間の座位、ストレスなども影響すると言われています。


1-5.その他の原因

上記の臓器の病気以外にも、以下のような原因で左下腹部痛が起こることがあります。

  • 筋肉痛: 腹筋の使いすぎや、無理な体勢による筋肉の炎症。

  • 帯状疱疹: 水痘・帯状疱疹ウイルスが再活性化することで起こります。皮膚症状(赤い発疹や水ぶくれ)が出る前に、ピリピリ、チクチクとした神経痛様の痛みが先行することがあり、腹部に発症すると腹痛として感じられます。

  • 腹部大動脈瘤(ふくぶだいどうみゃくりゅう): 腹部の大動脈がこぶ状に膨らむ病気で、破裂すると命に関わります。破裂前は無症状のことが多いですが、大きくなると腹痛や腰痛を感じることがあります。まれですが、非常に危険な状態です。


2.左下腹部痛に伴う主な症状


左下腹部痛と同時に以下のような症状が現れる場合、原因疾患を特定する手がかりになります。

  • 発熱: 感染症(大腸憩室炎、腎盂腎炎、骨盤内炎症性疾患など)の可能性があります。

  • 吐き気・嘔吐: 消化器系の炎症(大腸憩室炎、急性腸炎など)、S状結腸軸捻転、尿路結石、卵巣茎捻転などで見られます。

  • 下痢: 感染性腸炎、過敏性腸症候群(下痢型)、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病)、虚血性大腸炎などで見られます。

  • 便秘: 便秘症、過敏性腸症候群(便秘型)、大腸がん、大腸憩室炎などで見られます。

  • 血便・下血:

    • 鮮血に近い赤い便: 虚血性大腸炎、大腸憩室出血、痔など。

    • 粘液や膿が混じった便(粘血便): 潰瘍性大腸炎、クローン病、感染性腸炎など。

    • 黒っぽい便(タール便): 上部消化管(胃や十二指腸)からの出血の場合に多いですが、大腸からの出血が少量で腸内に長く留まった場合にも見られることがあります。

  • 排尿時の痛み・頻尿・残尿感: 膀胱炎、尿路結石、腎盂腎炎、前立腺炎などで見られます。

  • 不正出血(女性): 子宮筋腫、子宮内膜症、骨盤内炎症性疾患、異所性妊娠などで見られます。

  • おりものの異常(女性): 骨盤内炎症性疾患などで見られます。

  • 腹部膨満感: 便秘、過敏性腸症候群、大腸がん、S状結腸軸捻転などで見られます。

  • 体重減少: 大腸がん、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病)などの慢性疾患で原因不明の体重減少が見られることがあります。

これらの随伴症状の有無や特徴は、診断の重要な手がかりとなります。


3.こんな時はすぐに医療機関へ!受診の目安


左下腹部痛は、軽いものから緊急性の高いものまで様々です。以下のような症状が見られる場合は、自己判断せずに速やかに医療機関(消化器内科、一般内科、泌尿器科、婦人科など、症状に応じて)を受診しましょう。夜間や休日の場合は、救急外来の受診も検討してください。

【すぐに受診すべき危険な症状】

  • 突然発症した、我慢できないほどの激しい腹痛

  • 痛みが徐々に強くなり、冷や汗が出る、顔面蒼白になる

  • 意識がもうろうとする、呼びかけに反応が鈍い

  • 呼吸が苦しい、息切れがする

  • 大量の血便や吐血がある

  • 高熱(38.5℃以上)を伴う

  • お腹が板のように硬く張っている(腹膜炎の兆候)

  • 排便・排ガスが完全に止まってしまい、お腹がパンパンに張る(腸閉塞の兆候)

  • 妊娠の可能性がある女性で、急な下腹部痛や不正出血がある(異所性妊娠破裂の可能性)

【数日以内に受診を検討すべき症状】

  • 痛みが持続している、または繰り返す

  • 痛みが徐々に悪化している

  • 発熱(微熱~38℃程度)が続く

  • 下痢や便秘が改善しない

  • 血便や粘血便が少量でも見られる

  • 排尿時の痛みや頻尿、残尿感が続く

  • 不正出血やおりものの異常がある(女性)

  • 原因不明の体重減少がある

  • 市販薬を服用しても症状が改善しない、または悪化する

上記以外でも、ご自身で判断に迷う場合や不安な場合は、遠慮なく医療機関に相談しましょう。


4.左下腹部痛の検査:何が行われるの?


医療機関では、痛みの原因を特定するために様々な検査が行われます。

  • 問診:

    • いつから痛むか、どのような痛みか(ズキズキ、チクチク、キリキリなど)、痛みの強さ、痛む場所、他に症状があるか(発熱、吐き気、下痢、血便など)、食事の内容、既往歴、服用中の薬、アレルギー、月経周期(女性)、妊娠の可能性(女性)などを詳しく聞かれます。正確な情報を伝えることが重要です。

  • 視診・触診・聴診:

    • お腹の状態(張り、色、傷など)を見たり、お腹を押さえて痛む場所や硬さ、しこりの有無などを確認したり(触診)、聴診器で腸の音を聞いたりします(聴診)。

  • 血液検査:

    • 炎症の程度(白血球数、CRPなど)、貧血の有無、肝機能、腎機能、膵臓の酵素、腫瘍マーカー(がんが疑われる場合)などを調べます。感染症や炎症性疾患、がんなどの診断に役立ちます。

  • 尿検査:

    • 尿中の血液(潜血)、白血球、細菌、糖、タンパクなどを調べます。尿路感染症(膀胱炎、腎盂腎炎)、尿路結石、腎臓の病気などの診断に役立ちます。

  • 便検査:

    • 便中の血液(便潜血検査)、細菌やウイルスの有無(便培養検査)などを調べます。消化管出血の有無や感染性腸炎の原因特定に役立ちます。

  • 画像検査:

    • 腹部超音波検査(エコー検査):

      • 超音波を使ってお腹の中の臓器(肝臓、胆嚢、膵臓、腎臓、脾臓、膀胱、子宮、卵巣など)の状態を観察します。大腸憩室炎、虫垂炎(右下腹部ですが関連痛も)、卵巣嚢腫、子宮筋腫、尿路結石、腹水などの診断に有用です。比較的簡便で、放射線被ばくの心配もありません。

    • 腹部X線検査(レントゲン検査):

      • 腸管内のガスや便の状態、腸閉塞の有無、結石の影などを確認します。

    • 腹部CT検査:

      • X線を使って体の断面を撮影し、より詳細な情報を得ます。超音波検査では見えにくいS状結腸などの大腸の病変(憩室炎、虚血性大腸炎、大腸がん、S状結腸軸捻転など)や、炎症の範囲、腹腔内の膿瘍、腹部大動脈瘤などの診断に非常に有用です。造影剤を使用することで、血管の状態や血流も評価できます。

    • 腹部MRI検査:

      • 強力な磁石と電波を使って体の断面を撮影します。CT検査と比べて放射線被ばくがなく、軟部組織(筋肉、脂肪、内臓など)の描出に優れています。婦人科疾患(子宮内膜症、卵巣嚢腫など)や、特定の消化器疾患、炎症性腸疾患の評価に用いられることがあります。

  • 内視鏡検査:

    • 大腸内視鏡検査(大腸カメラ):

      • 肛門から細いカメラ(内視鏡)を挿入し、大腸全体の粘膜を直接観察します。炎症、潰瘍、ポリープ、がんなどを発見でき、必要に応じて組織の一部を採取して病理検査(生検)を行うことも可能です。大腸憩室炎、虚血性大腸炎、潰瘍性大腸炎、クローン病、大腸がんなどの診断に非常に重要です。ポリープがあればその場で切除することもできます。

  • その他の検査:

    • 婦人科的診察・検査(女性の場合): 内診、経腟超音波検査などで子宮や卵巣の状態を詳しく調べます。

    • 泌尿器科的検査: 尿流測定、残尿測定、膀胱鏡検査などが適宜行われます。

これらの検査を組み合わせて、総合的に診断が行われます。


5.左下腹部痛の治療:原因に応じたアプローチ


左下腹部痛の治療は、その原因となっている病気によって大きく異なります。

5-1.原因疾患別の主な治療法

  • 便秘症:

    • 治療: 食物繊維の摂取、水分補給、適度な運動といった生活習慣の改善が基本です。改善が見られない場合は、緩下剤(下剤)を使用します。

  • 過敏性腸症候群 (IBS):

    • 治療: 生活習慣の改善(規則正しい生活、十分な睡眠、ストレス管理)、食事療法(低FODMAP食などが試されることも)、薬物療法(整腸剤、高分子重合体、消化管運動調整薬、抗コリン薬、抗不安薬、抗うつ薬など症状に応じて)が行われます。

  • 大腸憩室炎:

    • 治療:

      • 軽症: 抗生物質の経口投与、食事制限(消化の良いもの)、安静。

      • 中等症~重症: 入院して絶食、点滴による水分・栄養補給、抗生物質の静脈投与。膿瘍形成や穿孔(腸に穴が開く)などがあれば、ドレナージ(膿を出す処置)や緊急手術が必要になることもあります。

  • 虚血性大腸炎:

    • 治療: 多くは安静と食事療法(絶食または消化の良い流動食から開始し、徐々に固形食へ)で自然に軽快しますが、重症の場合は入院して点滴治療を行います。腸管安静が重要です。まれに腸管壊死や狭窄を起こした場合は手術が必要となることがあります。

  • 潰瘍性大腸炎・クローン病(炎症性腸疾患):

    • 治療: 寛解導入療法と寛解維持療法が基本です。薬物療法が中心で、5-ASA製剤、ステロイド、免疫抑制剤、生物学的製剤などが病状や範囲に応じて使用されます。重症例や合併症がある場合は手術も検討されます。栄養療法も重要です。

  • 大腸がん:

    • 治療: 内視鏡治療(早期がんの一部)、手術(開腹手術、腹腔鏡手術)、化学療法(抗がん剤治療)、放射線治療などを、がんの進行度(ステージ)や患者さんの状態に応じて組み合わせて行います。

  • S状結腸軸捻転症:

    • 治療: 多くは緊急で内視鏡的整復術(大腸カメラでねじれを戻す)が試みられます。整復が困難な場合や、腸管壊死が疑われる場合は緊急手術(ねじれた腸管の切除、人工肛門造設など)が必要です。再発予防のために待機的に手術を行うこともあります。

  • 急性腸炎:

    • 治療: 基本は安静と水分・電解質の補給です。脱水がひどい場合は点滴を行います。細菌感染が原因で重症の場合は抗生物質を使用することもありますが、ウイルス性が疑われる場合は対症療法が中心です。整腸剤や吐き気止め、解熱鎮痛剤などが用いられます。

  • 尿路結石:

    • 治療:

      • 小さい結石: 自然排石を期待して、水分を多く摂取し、鎮痛剤(NSAIDsなど)で痛みをコントロールします。排石促進薬が使われることもあります。

      • 大きい結石、自然排石が困難な場合: 体外衝撃波結石破砕術(ESWL)、経尿道的尿管結石砕石術(TUL)、経皮的腎結石砕石術(PNL)などの外科的治療が行われます。

  • 腎盂腎炎:

    • 治療: 抗生物質の投与が基本です。軽症の場合は経口投与、中等症~重症の場合は入院して点滴で抗生物質を投与します。十分な水分補給と安静も重要です。

  • 膀胱炎:

    • 治療: 抗生物質の経口投与が基本です。通常は3~7日間程度の服用で改善します。水分を多く摂り、排尿を我慢しないことも大切です。

  • 卵巣嚢腫・卵巣茎捻転:

    • 治療:

      • 卵巣嚢腫: 小さく症状がない場合は経過観察。ある程度の大きさになったり、症状がある場合、悪性が疑われる場合は手術(嚢腫のみ摘出または付属器切除)が検討されます。

      • 卵巣茎捻転: 緊急手術でねじれを戻し、可能であれば卵巣を温存しますが、壊死している場合は付属器切除を行います。

  • 子宮内膜症:

    • 治療: 薬物療法(鎮痛剤、低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬(LEP)、黄体ホルモン療法、GnRHアゴニスト/アンタゴニスト療法など)や手術療法(病巣除去、癒着剥離、根治手術など)があります。年齢、症状、妊娠希望の有無などを考慮して治療法を選択します。

  • 子宮筋腫:

    • 治療: 症状がない場合や小さい場合は経過観察。症状がある場合や不妊の原因となっている場合は、薬物療法(対症療法、ホルモン療法)や手術療法(筋腫核出術、子宮全摘術)、子宮動脈塞栓術(UAE)などが検討されます。

  • 骨盤内炎症性疾患 (PID):

    • 治療: 抗生物質の投与が基本です。原因菌を特定し、感受性のある抗生物質を選択します。重症の場合は入院して点滴治療が必要です。

  • 異所性妊娠:

    • 治療: 状態に応じて待機療法、薬物療法(メトトレキサート投与)、手術療法(卵管切開術、卵管切除術など)が選択されます。卵管破裂など緊急性の高い場合は、速やかに手術が必要です。

  • 精巣上体炎:

    • 治療: 抗生物質の投与、安静、陰嚢の挙上・冷却、鎮痛剤の使用など。

  • 前立腺炎:

    • 治療:

      • 急性細菌性前立腺炎: 抗生物質の投与(初期は点滴、その後経口)。

      • 慢性細菌性前立腺炎: 長期間の抗生物質投与。

      • 慢性非細菌性前立腺炎/慢性骨盤痛症候群: 鎮痛剤、α遮断薬、抗炎症薬、漢方薬、生活指導(長時間の座位を避ける、刺激物を控えるなど)、温熱療法、マッサージなどが組み合わせて行われます。

  • 筋肉痛: 安静、ストレッチ、湿布、消炎鎮痛剤など。

  • 帯状疱疹: 抗ウイルス薬の内服または点滴、鎮痛剤。早期治療が重要です。

  • 腹部大動脈瘤:

    • 治療: 径が小さい場合は経過観察と生活習慣の改善(禁煙、血圧管理など)。一定以上の大きさになったり、拡大速度が速い場合、症状がある場合は、人工血管置換術(開腹手術またはステントグラフト内挿術)が検討されます。破裂した場合は緊急手術が必要です。

5-2.自宅でできる応急処置と注意点

痛みが軽い場合や、すぐに医療機関を受診できない場合の応急処置として、以下の方法があります。ただし、これらは一時的な対症療法であり、根本的な解決にはなりません。痛みが続く場合は必ず医療機関を受診してください。

  • 安静にする: 無理に動かず、楽な体勢で休みましょう。

  • お腹を温める(痛みが和らぐ場合): 使い捨てカイロや湯たんぽなどで温めると、筋肉の緊張が和らぎ、血行が改善して痛みが軽減することがあります。ただし、**炎症が強い場合(発熱や激痛がある場合)は温めると悪化する可能性があるため、注意が必要です。**その場合は冷やす方が良いこともありますが、自己判断は禁物です。

  • 消化の良い食事を摂る: 症状が落ち着いている場合は、おかゆやうどんなど、消化しやすく胃腸に負担の少ないものを選びましょう。脂っこいもの、刺激物、アルコールは避けてください。

  • 市販の鎮痛剤や整腸剤の使用:

    • 鎮痛剤: 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)やアセトアミノフェンなどがありますが、原因によっては症状を悪化させたり、診断を遅らせたりする可能性もあるため、使用は慎重に。特に消化管の病気が疑われる場合は、胃腸への副作用に注意が必要です。

    • 整腸剤: 便秘や下痢を伴う場合に一時的に使用するのは良いでしょう。

    • 注意点: 市販薬を数日服用しても症状が改善しない、または悪化する場合は、使用を中止し、速やかに医療機関を受診してください。また、何の薬をいつからどのくらい服用したかを医師に伝えられるようにしておきましょう。


自己判断での市販薬の長期連用は避けましょう。


6.左下腹部痛の予防:日常生活でできること


原因となる病気の中には、日頃の生活習慣を見直すことで予防が期待できるものもあります。

  • バランスの取れた食生活:

    • 食物繊維を十分に摂る: 野菜、果物、きのこ類、海藻類などを積極的に摂取し、便通を整えましょう。これは便秘症や大腸憩室症、大腸がんの予防に繋がります。

    • 脂肪分の多い食事を控える: 動脈硬化のリスクを高め、虚血性大腸炎などの原因となることがあります。

    • 塩分を控える: 高血圧は様々な生活習慣病のリスク因子です。

    • 発酵食品を摂る: ヨーグルトや納豆などの発酵食品は腸内環境を整えるのに役立ちます。

  • 十分な水分補給:

    • 便秘予防や尿路結石の予防に重要です。1日に1.5~2リットル程度の水分を目安に摂りましょう。

  • 適度な運動:

    • ウォーキングなどの有酸素運動は、腸の動きを活発にし、便秘解消やストレス軽減に繋がります。

  • 規則正しい生活と十分な睡眠:

    • 自律神経のバランスを整え、過敏性腸症候群などの予防・改善に役立ちます。

  • ストレスを溜めない:

    • ストレスは万病のもとと言われます。過敏性腸症候群をはじめ、多くの消化器疾患や免疫系の疾患に関与します。自分なりのリフレッシュ方法を見つけ、上手にストレスをコントロールしましょう。

  • 禁煙・節酒:

    • 喫煙は血流を悪化させ、動脈硬化を促進します。過度な飲酒は消化器系に負担をかけます。

  • 排便習慣を整える:

    • 便意を感じたら我慢しないようにしましょう。

  • 定期的な健康診断・がん検診を受ける:

    • 特に大腸がんや婦人科系のがんは、早期発見・早期治療が非常に重要です。症状がなくても、定期的に検診を受けましょう。


7.まとめ:左下腹部痛を感じたら早めの受診を


左下腹部痛は、軽い便秘から緊急性の高い病気まで、実に様々な原因によって引き起こされます。痛みの種類や強さ、伴う症状などからある程度原因を推測することはできますが、正確な診断のためには医療機関での検査が不可欠です。

「このくらいの痛みなら大丈夫だろう」と自己判断で放置せず、特に痛みが持続する場合や、いつもと違う強い痛み、発熱や血便などの危険なサインが見られる場合は、迷わず医療機関を受診してください。早期発見・早期治療が、より良い結果に繋がります。

この記事が、左下腹部痛に悩む方々の一助となり、適切な行動へのきっかけとなれば幸いです。あなたの健康を心から願っています。


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