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スキルス胃がん:恐怖と希望の光ー胃カメラで分かるの?

  • 院長
  • 9月17日
  • 読了時間: 8分

はじめに:沈黙の病、スキルス胃がんとは


胃がんと聞くと、多くの方は早期発見・早期治療が可能ながんをイメージされるかもしれません。しかし、胃がんの中には、**「スキルス胃がん」という非常に特殊でたちの悪いタイプが存在します。一般的な胃がんのように胃の粘膜からポリープ状に盛り上がって発育するのではなく、胃壁全体にまるで竹の皮を巻いたかのように硬く、厚く、そして縮小させながら広がっていくのが特徴です。その特異な発育様式から、「硬がん」**とも呼ばれ、初期の自覚症状に乏しく、発見されたときにはすでに進行しているケースが多いことから、「沈黙の病」とも呼ばれています。


この病気の恐ろしさは、その診断の難しさと治療の困難さにあります。内視鏡検査でも見つけにくく、一般的な胃がんの治療法が効きにくいことも少なくありません。しかし、決して絶望的な病気ではありません。近年、診断技術の進歩や新しい治療法の開発が進んでおり、適切な知識と向き合うことで、希望の光を見出すことは可能です。


本記事では、スキルス胃がんという病気の正体、その特徴、原因、症状、そして最新の診断・治療法について、専門的な知見に基づきながらも、分かりやすく解説していきます。ご自身や大切な人がこの病気と向き合うことになった際の、羅針盤となるような情報を提供することを目指します。


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この写真はスキルス胃がんです。

右側が大弯の襞ですが、これが厚くなっています。

全体的な粘膜の浮腫上変化も認められます。

専門家ならまず見逃すことは有りません。



第1章:スキルス胃がんの正体と特徴


1-1. スキルス胃がんとは?一般的な胃がんとの違い


一般的な胃がんが胃の粘膜表面から外に向かって発育するのに対し、スキルス胃がんは、胃の粘膜の下にある**「粘膜下層」や「固有筋層」**といった、より深い層を這うように、そして胃壁全体に染み渡るように広がっていきます。この独特な発育様式が、いくつかの特徴を生み出します。


  • 肉眼で見えにくい:胃の内側から見ると、ただ胃壁が硬く、ごわごわしているようにしか見えないことが多く、内視鏡検査でも見逃されやすいのです。

  • 胃の収縮力が低下する:胃全体が硬くなるため、食べ物を消化・排出する機能が低下し、吐き気や食欲不振、体重減少といった症状につながります。

  • 転移しやすい:胃の深い層を這うように広がるため、がん細胞が血管やリンパ管に侵入しやすく、腹膜播種(ふくまくはしゅ)や他の臓器への転移を起こしやすい傾向があります。


1-2. なぜスキルス胃がんになるのか?その原因とリスク要因

スキルス胃がんの発生メカニズムは完全には解明されていませんが、いくつかのリスク要因が指摘されています。


  • ヘリコバクター・ピロリ菌との関連:ピロリ菌感染は、一般的な胃がんの大きな原因ですが、スキルス胃がんとの直接的な因果関係はまだ明確ではありません。しかし、ピロリ菌が引き起こす慢性胃炎が、胃の粘膜環境を変化させ、がん化を促進する可能性が考えられています。

  • 遺伝的要因:遺伝子の変異が関与していることが分かっています。特にCDH1遺伝子の変異は、遺伝性のびまん性胃がんの原因となり、スキルス胃がんを発症しやすいことが知られています。

  • 年齢と性別:比較的若い年代(30~40代)の女性に多く見られる傾向があり、特に注意が必要です。しかし、高齢者にも発生します。

  • 生活習慣:塩分の多い食事や喫煙などがリスクを高める可能性が指摘されていますが、一般的な胃がんに比べ、生活習慣との関連はまだ限定的と考えられています。


第2章:見逃されやすい症状と早期発見の重要性


2-1. スキルス胃がんの初期症状:なぜ気づきにくいのか

スキルス胃がんの初期症状は、非常に曖昧で、他の消化器疾患と区別がつきにくいのが特徴です。多くの患者さんが、以下のような症状で医療機関を受診されます。

  • 胸やけ、胃もたれ、膨満感:食事の量が少なくても、お腹が張った感じが続く。

  • 食欲不振、体重減少:食べたい気持ちがわかず、だんだん痩せてくる。

  • 吐き気、嘔吐:胃の動きが悪くなるため、食べたものがうまく消化されずに逆流しやすくなる。

これらの症状は、ただの「胃の調子が悪い」と勘違いされがちです。市販の胃薬で一時的に症状が和らぐこともあり、医療機関への受診が遅れてしまうケースが少なくありません。


2-2. 症状が進んだ際のサイン

病状が進行すると、以下のような深刻な症状が現れることがあります。

  • 上腹部の痛み:胃壁全体が硬く、縮むため、強い痛みを伴うことがある。

  • 貧血:がんからの出血や栄養吸収の悪化により、顔色が悪くなり、めまいやだるさを感じるようになる。

  • 腹水(腹部膨満):腹膜播種が進行すると、お腹の中に水がたまり、お腹がパンパンに張ってくる。

  • 便秘:胃の機能低下により、消化・吸収が悪くなり、便通に影響が出ることがある。


第3章:最新の診断技術と治療法


3-1. 診断の壁を乗り越える:内視鏡検査と生検の限界


スキルス胃がんの診断は、医師の経験と高度な技術が求められます。

  • 内視鏡検査:最も重要な検査ですが、胃の粘膜表面が比較的きれいなため、熟練した医師でも見逃すことがあります。胃の伸縮性が悪い、胃壁が分厚いといった「間接的な所見」に気づくことが重要です。

  • 生検:内視鏡で組織を採取して病理検査を行いますが、がん細胞が胃の深い層にいるため、表面の組織だけではがん細胞が検出されないことがあります。複数回、深い組織まで採取することが重要です。


3-2. 精密診断のための先進技術


  • 超音波内視鏡:胃の内側から超音波を当てることで、胃壁の層構造を詳細に観察できます。これにより、がんがどの深さまで浸潤しているか、リンパ節に転移があるかなどを正確に診断できます。

  • CT・MRI検査:腹部全体のCTやMRIを撮影することで、がんの広がりやリンパ節、肝臓などへの転移の有無を調べます。特に腹膜播種の診断に欠かせません。

  • PET検査:がん細胞がブドウ糖を多く取り込む性質を利用した検査です。全身のがんの広がりを一度に調べることができます。


3-3. スキルス胃がんの治療:外科手術、抗がん剤、そして免疫療法


スキルス胃がんの治療は、病期(ステージ)や患者さんの全身状態に応じて、集学的治療(複数の治療法を組み合わせる方法)が選択されます。

  • 外科手術:病変が胃の壁内に限局している場合、胃の全摘出や一部切除が検討されます。しかし、スキルス胃がんは広範に広がっていることが多く、手術の適用は慎重に判断されます。

  • 抗がん剤治療(化学療法):スキルス胃がんに対しては、病状の進行を抑え、生活の質を維持するために、抗がん剤治療が中心となります。近年、新しい分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬が開発され、従来の抗がん剤と組み合わせて治療効果の向上が図られています。

  • 免疫チェックポイント阻害薬:がん細胞が免疫の攻撃から逃れる仕組みをブロックし、本来の免疫力を高める新しいタイプの薬剤です。胃がんの一部(マイクロサテライト不安定性:MSI-H)には、非常に高い効果が期待できることが分かっています。

  • 緩和ケア:治療中や治療が困難な場合でも、痛みや吐き気などのつらい症状を和らげるための緩和ケアは非常に重要です。


第4章:未来への展望と患者・家族へのメッセージ


4-1. 診断・治療の最前線


スキルス胃がんの研究は日々進んでおり、希望の光が見えてきています。

  • ゲノム医療:一人ひとりの患者さんの遺伝子情報を詳細に解析し、がんの性質に合った最適な治療薬を選択する「個別化医療」が実用化されつつあります。

  • リキッドバイオプシー:血液や尿からがんのDNAを検出する技術です。これにより、体の負担が少なく、リアルタイムにがんの状態をモニタリングできる可能性があります。

  • 早期発見への取り組み:内視鏡医の教育や診断技術の標準化が進められており、見落としを減らすための努力が続けられています。


4-2. スキルス胃がんと向き合うために


スキルス胃がんは、多くの不安を伴う病気です。しかし、患者さんとご家族が正しい知識を持ち、医療チームと信頼関係を築くことで、前向きに病気と向き合うことができます。

  • 専門医に相談する:スキルス胃がんの治療経験が豊富な専門医がいる病院を選びましょう。セカンドオピニオンを活用することも重要です。

  • 心のケアを大切に:病気との闘いは、体力だけでなく、精神的な負担も大きいです。がん相談支援センターやピアサポート(患者会)などを利用し、一人で悩まずに相談できる場所を見つけましょう。

  • 情報を正しく理解する:インターネット上には様々な情報があふれていますが、信頼できる医療機関や学会、公的機関の情報を参考にしましょう。


まとめ:諦めない心と希望の光


スキルス胃がんは、早期発見が難しく、治療も困難な病気です。しかし、診断技術や治療法は日進月歩で進化しており、決して諦めるべき病気ではありません。

大切なのは、身体の小さなサインに耳を傾け、異変を感じたら、ためらわずに医療機関を受診すること。そして、もし診断されたとしても、専門医と協力し、最新の治療法を学び、自分に合った治療を選択することです。

この病気に立ち向かうすべての人に、この情報が希望の光となり、一歩踏み出す勇気を与えることを願っています。


最後の一言


スキルスも実はピロリ胃がんです。


また、表面にも必ず癌が顔を出している部分が有ります。

そこを起点として下に潜っていくのです。


ちゃんと訓練を受けている医者なら見逃しません。


こういう癌を見落とさない事が専門家とそうではない医者の大きな違いです。


口コミ高評価と綺麗なHPで商売をしている内視鏡専門クリニックを

どうして信じられるのか不思議で仕方が有りません。

一目で分かるんですけどね。プロポフォール名人だということが。


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